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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

お母さんが、そちらからのお手紙見せて下さいました。八月二十六日の分も。そして、その中に、わたしがそちらに行く計画も変化したかもしれずとあり、その通り御洞察と思いました。

いろいろの点から、これからそちらへ行くことはやめます。網走を知らないことは残念ですが、少くとも来年の春迄の間に、わたしがそちらへ行くことはおやめにいたします。書く仕事の点から丈云っても、資料の関係や何かで東京にいないと困りますが、食物が余り閉口で、仕事出来る丈の食物がなく、其を獲得する努力をしては勉強どころではありません。こういう風に衆議一決いたしました。わたしは当分開成山にいて、仕事の出来る室か家を見つけ、一番近い足休めの場所として暮すこと。一ヵ月に一度ぐらい、上京すればいいこと。どうせ仕事をもって来たり、本やとの打合わせがありますから。そして、林町がやけていないのだからそこへは優先的に戻れますし。

来年の春までのうちに随分あれこれと変化いたしましょう。このごろちょいちょい泉子が来てね、うれしそうに、たのしそうに、賢そうなことや手ばなしの話をいたします。何よりも心配なのは好ちゃんに御馳走するのにものがないことだそうです。