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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
きのう沁々とながめました。雪景色の面白さは、こまかい処にまで雪が吹きつもって、一つの竹垣にもなかなかの明暗をつくる、そこが目に新しく面白いのね。雪は本当に面白いわ。そして、薪を雪の下から出して、サラサラとはいたらちっとも濡れていなくてすぐ燃えました、雪の下の地面は、降ったばかりのときは全く干いているのね。ほんとにこれなら雪を掘って人が寒さよけにするわけと感服いたしました。これまでも見ていたのでしょうのにね。もしこんな雪の下に芽ぐむ蕗の薹でもあったらどんなに春雪はやさしさに満ちるでしょう。昔は、わたしがたどたどと小説のけいこをしていた部屋の小庭の松の下に蕗があって、丸っこくて美味しい芽を出しました。わたしには、家のぐるりに、ちょいちょいと茗荷だの蕗だのというものがとれたらうれしいという趣味がるのよ。そして楓の多い庭がすきなのよ。季節の抑揚ある樹木が庭らしいわね。紅梅の濃いのがほしゅうございます、よせ植えはいかがな様子でしょう、それでも梅は梅なりき、という風? 蕾がそだって居りましょうか。一本の濃い紅梅の下に、蕗の薹がめぐんでいて、雪の上に陽炎が立ち、しめた障子のなかにわたしの一番仕合せな団欒があるとしたら、そんな図柄は金地の扇面にこそ描かれると思います。