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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
今夜つくかしら。水道・ガスなしです。そちらは灯つきましたろうか。日暮里駅のところでえらい目を見た目白の先生が後へも先へも行けずこちらへ逃げて来たら、火の手が余りなのでわたしが果してどうかしらと思っていたら大きい声が聞えたので安心した由、タンカの上で全く意識を失っていたときの様子[自注4]が(夏の病気のとき)すぐ思い浮んだそうでした、勿論そちらはお変りなし、ね、そう思って書いていて、急に何だか自分の安心に愕きました。あなたの御気分とこういうことの安全とは別なのにね、何と永年わたしは大丈夫と思って暮して来たことかと思います。自分も何だか大丈夫と思っているのよ。可笑しいわね。では明日。
[自注3]いかめしい建物の庇合わい――市ヶ谷刑務所の建物――父の死んだ時、百合子はこの建物の中にいた。
[自注4]タンカの上で全く意識を失っていたときの様子――一九四二年七月、巣鴨拘置所で百合子が熱射病でたおれたときのこと。
三月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(和田三造筆「戸穏神楽舞」の絵はがき)〕
三月七日 余り手紙のつきがおそいからこんなハガキさしあげて見ます。