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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
03 一九三六年(昭和十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页
ず、どっかへ行ってみようと私が云い出し、両国の河岸までのしてしまいました。何年ぶりかで夜の大河を眺め、なかなかいい気分でした。惜しいことに河岸でゆっくり腰かけやすむところがなくてね。どこかお台場かどこかへ小さい船の出る浮棧橋まで出てみたら、モーターボートが通ると波のうねりでその小さい四角な棧橋がプワープワーと揺れてね。丸まっちい私は平気なようなこわいようなの。鶴さんは例の「百日かずら」の頭を風にふかせ、竹の御愛用ステッキ(これは文壇漫画にもかかれます。体は細い、だがステッキの太さよ。という工合で)を顎の下に突いてしゃがんでいたが、やがてホラどうだねと立って左、右、左、右と脚をひろげて力を入れ、小さいフワフワ棧橋をなおゆすろうとするのです。ところが不覚にも、その棧橋の陸につないであるところに私と栄さんと合計三十何貫の重みがずっしりとかかっていることに心付かず、私が「十二貫じゃ無理よ、こっちはこの通りなんだからね、」と云ったのでナアーンダとあきらめ、いねちゃん、大笑い、帰りに盲滅法に歩いたら明治座の横のプラタナスの大変綺麗な並木のある新しい公園へ出て、震災後のこの辺の新鮮な風景を味いました。