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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

今度は淀橋にいた時から注意をそこに集めていましたが徐々に弱り、父の亡くなった前後、非常に不安定な状態になりました。本来はその時最も入院が必要でした。けれどもその都合にゆかず、予審が終ってから即ち目下養生をしているという次第です。お医者様は私の心臓について、極めて公平で自然な説明をされます。「これで持っている間持つでしょうとしか申上られませんね」と。至極尤もなので、私は笑い出し、心の中で、これでは貴方だってふーむと仰云るしか返事があるまいと、或ユーモアを感じるのです。全くそうらしいの。持つ迄持つということは、つまり私は生きていられるだけ生きていられるということで、私が持ち前のたっぷりや的生存を自信をもって或期間つづけ得ると云うことです。私の知識と意志で出来るだけ衛生に叶った生活法をやって行って、さて、主観的に自覚されない微妙な均衡の破れで、不意と私が生きつづけられなくなったとしたら、其はどうも困るわ、貴方には、御免下さい、と云うしかない。父と私との実に充実した情愛を包む各瞬間をして益※(二の字点、1-2-22)光彩あり透明不壊であるように生きましょう。