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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
03 一九三六年(昭和十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页
こんど会いましょうね」
太郎はまだ後輩故卓上を握ってア、ア、というだけ。
きのう二百哩ばかりドライヴをした、いろいろの話を書くのが順のようだけれども、きょうはあなたが八月二十二日に書いて下すった手紙が朝食堂のテーブルの上にのっていたので、先ずそのお礼を申します。
花飾りで囲まれた「八月三十日の午后」の縦書き手書き文字
きょういただいたお手紙はいろいろの意味で、美しさに満ちて感じられました。だからこうしてこの日のまわりには花飾りがつけられたのです。ヘーゲルの話は大変面白く思いました。何故なら私はこの手紙の二十九日の分で書いているように、ヘーゲルが筋の立った理屈にまとめて考えていることを全身全心で感覚し、その中心情熱によって、さまざまの感情を高き低き生活の峰々として統一して押しすすめているのだから。
私は本当に他出という表現で云われている、それよりもっと生々しい緊密さ、謂わばこっちが風邪をひけばそっちも風邪をひく位の肉体的な感じで感覚している。何のために生きているかということが、はっきりしているからこそ、私は主観的には迅に悲劇を脱却しているわけです。只人間生活の歓び確信というものの、最も鋭い、最もニュアンスに富んだ、最も出来合いでないものの感じ得る陰翳――それによって明暗が益※(二の字点、1-2-22)生彩を