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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

昨日はそちらへ徳三さんの細君が初めてゆくので案内がてら様子を知るためにゆきました。この手紙いつ頃御覧になれるのかしら。

暑くなりましたからお体を猶々御大事に。単衣をお送りいたします 手拭シャボンと。では又。

[自注14]巣鴨拘置所――一九三七年六月十一日、顕治は市ヶ谷刑務所未決から新築落成した巣鴨拘置所へ移転した。

六月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

六月三十日 雨  第十七信

私たちは同じ区内に住んでいるのに、お手紙はやはり半月かかってくる。何と不思議のようなことでしょう。十六日づけのお手紙ありがとう。蒲団の綿が切れていた原因についてはまことに何とも申しようなし[自注15]。私は心からあなたの膝小僧を撫でてさしあげます。

十九日には徳さんの細君についてそちらへゆきました。そして一寸差し入れをしておいたが、あとはそちらでもうおやれになっているでしょうか。合シャツは去年のよ。昔のはもう使って居りません。ギューギューというのは洗ってちぢんだのかしら。中野さんはあの字典を『中央公論』に書いた小説のお金で入れてくれたのです。鶴さんは大変まじめによい仕事をして居ります。