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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
そして曰く「信は厳粛な経験をつんだ、しかし微笑んでいる大人である。油断なき信は、私達の人生と境遇の横暴とに関する経験の上に築かれる。信は必ず失敗を見込み、名誉ある敗北を一種の勝利と見做す云々」スティブンソンの「宝島」やなんかを私たちは面白がらないのだが、そういうものを書かせた――自分の条件を最大に活かして――彼の生きる気持には面白いところがあります。精神の活々とした感受性、習慣や反覆でこわばらない心をこの人は持ちのいい心と云っている。これは柔軟な含蓄ある表現ですね。この表現の中には愉しいものがあるわ。
きょうは、今月に入ってはじめての丸一日の休日です。あしたあたりから短い小説を一つ書き文芸時評をかき、一寸休んで九月初旬八月下旬までに又たっぷり小説のつづきを書きます、『新潮』。貴方の仰云るように生活をきちんとして、時間を内容ある仕事でぴっちりとはりつめたいと思う。この頃やっとそのこつがわかり、自分もそれに少し馴らされて来たし、仕事と生活との統一の水準が高まりました。覚えていらっしゃるかしら? いつかバルザックが貧乏のためにあれだけの仕事をしたということを、あなたが私へ比喩的に書いて下さったのを。