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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

ジョルジュ・サンドの「愛の妖精」というのをよんだ。一種のお伽話ですね。

九月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

九月十一日  第三十信

非常に荒い天候ですね。きのうの雨のひどさ、きょうの風のきつさ。南風だから落付かぬ。お気分はどうでしょう。本当に早くカラリとして秋になればよいと思います。そしたらさっぱりとなさるでしょう、そう思う。本年の残暑のきびしさには鬼もカクランを起した位です。

さて私は八日の朝、国、咲、私と三人で国府津からかえりました。出征する若い兵士とのりあわせ、東京まで来て、一寸林町へより、南江堂へ来ている本をとり目白へかえりました。家の方はSさんのお母さんが来ていてくれたので全く安全。どうしても栄さんの顔が見たく電報を出して夜来て貰ったが、ほかにも忽ち数人のお客です。あなたに手紙をかきかけたのがそれで中絶。次の日は、いろいろな人に入れてやるものを荷造りしたり、夕飯を戸塚の夫婦栄さん夫婦とたべて夜いろいろ物語。

きのうは雅子さんが真黒に日にやけ、体のしまった形で保田からかえって来ました。勤め一ヵ月休み月給もらっていて、又つとめるのです。