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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
この間のときも、あなたはどっちかというと私の心持を安めよう、不安を与えまい、大局的に悠々としてするべき勉強をしているようにと心にかけて御自分の健康のこともお話しでした。私もそのお気持はよくわかるしいろいろだが、不図考えて、私はいつもあなたの体の悪いときを過ぎてからだけそのことをきいているということについて非常にびっくりしました。例えば夏に腸出血をしたということを初めておききしたのは十月十五日頃でした。その前から永らく便に膿が混っていたことを伺ったのは先日がはじめてであったと思います。そしてそういう病状は既に年のはじまり頃からあったのでしょう。
細かい変化、熱の上下、そういうことは勿論大局的に眺め見とおしてゆかなければならないが、そういう、何か本質的な変りについて、私がそのときどきに知らなかったということは、決して今日の私をも安心せしめません。あなたとしてそれらを持って動じぬことで自然な恢復力を蓄積していらっしゃることは当然のことであるけれども、私が其を刻々に知らされないことは、考えて見れば、あまり特別です。あなたからしか謂わばあなたの体のリアリティーは知ることが出来ない。