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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
それに私は何だか持ちものが、これまでの所謂小説家とちがっているのだが、それが芸術的完成にまで到達していない、美しく素晴らしく脱皮し切っていない、そういう実に興味深い未知数が現在あるのです。稲子はいつもよい批評家であり鼓舞者で、私は注意ぶかくその言葉を考えながら、謂わば自分の発掘をしているようなところです。その点からでもこの長篇は重大な意味をもっているわけです。太郎のことはこの次、別に太郎篇をあげます。緑郎はついたということが分っただけ。あさってあたりお目にかかりに行きますが。この手紙では沢山書きのこしてしまった。本当に度々手紙を頂けるなら、実に、うれしい。
十一月十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十一月十六日 晴 第三十六信
きょうは、おなかのわるい日の手紙。どうかして、おなかの工合がわるくて、今日お目にかかりに行こうとしていたのに、それが出来ず。その代りにこの短いお喋りをいたします。
『文芸首都』にこの頃の文学の一つのあらわれとしてルポルタージュのことについてかき、国文学の専門の雑誌に二十枚ばかりの鴎外、漱石、荷風の文学にあらわれている婦人観をかき、短い小説をかく前の気分できのうは珍しく文展見物をしました。