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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

「アノー、もうみんなになって居るんですが」「ほんと※(疑問符感嘆符、1-8-77)」というような会話があって、締切をサイソクの速達が来ているという電話でかえって来ました。

隙間風がスースーと顔をなでる家ながら、我が家はよろしい。まして、ちゃんと一つの封緘がひかえていて見れば。

二葉亭の手紙や日記類の方への興味は全くそのとおりお送りする順として考えて居りました。安井氏の画に対して利口すぎるとの評がある。尤もです。奥行きなさは、愚かさではなくて、その利口さのために生じている。この頃の絵も妙に引込む力をもっていない。画面一杯にせり出して並んで、迚も目をひき、うまいがどこまでも心を引っぱりこむというところはない。ああいう本で梅原龍三郎のがあります。又見ておきましょう。絵というものは頭のためにいい(私たちのような仕事との関係で)。音楽は聴き込んでいって、こっちの心がこっちの心の内部で啓ける燃えもする工合ですが、絵はやっぱりその芸術の特質で、眼の前がパーッと絵に向って開いて行って、こっちから入りこんで行って、散歩をして、フムと思ったりハンと思ったり出来て、やはり楽しいものです。