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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

Xは詩を書いてゆくのですが、家から一銭も来なくなってしまった。十二月には私が下宿代を出しましたが、毎月そのようには行かないから一つは家を持つことを急いだのです。この二人は、勿論多幸ならんことを切望いたしますが、今のところX自身、愛情と一緒に一種の不調和を感じて居るらしい。このような直観的なものはゆだん出来ませんからね。Dさんは確かに人の注意をひくに足りる人ですが、あらゆる過去の経験で人に愛され、便利で信頼し得る友人をもち、いつも出来る人物と見なされ、自身それを知って、家の中では唯一人の男の子として生活して来た人にありがちな一つの特長をもっている。素直な人でしょうが、そういうものは強くある。よい意味でも、まだペダンティシズムをもっている。Xにはスーさんとは違うが、似た気質あり。すっかり納得ゆかないうちに一方では衝動的に行動する。人と人とのことはむずかしいものね。私はXと暮す以上は大いにXをふっくりしたものにしてやりたいと思って居ります。でも、私とXとは持っている感情の曲線が何という違いでしょう。Xは細いマッチの棒ぐらいのものをつぎつぎにもっている、そして詩も三四行のをかくの。