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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
」序です。今夜はこの家へはじめて佐藤俊子さん[自注8]が来て夕飯をたべ、手紙に押してあげた印を見て字の感じを大層ほめていました。あれは暖い字ですもの、本当に。とりあえず床に入る前。
[自注8]佐藤俊子さん――前年の秋、十八年ぶりにアメリカからかえってきた佐藤(田村)俊子。
二月二十八日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(封書)〕
二月二十八日 日曜日 晴
きょうは何だか久しぶりで心持のよい晴天。きのうの晩は座談会で銀座へ出かけたら、かえりはひどい雨で、上落合の神近さんの家の先で、送ってくれた自動車が泥濘にはまりこんでしまって荒ナワを車輪にからみつけても、砂利をおいても動かず。どうどうと降る雨の中でポツネンと待っていて、運転手が空車をつれて来て、それでうちへかえりました。その夜の雨の中でルームランプの明るい車の中にぽっつりといて、もうあなたはきっと眠っていらっしゃると、その刻限(十時すぎ)について考え何だか妙な気がしました。
きょうは昨夜の雨で晴れた空気の工合が一層心持よいのだが、あなたのところではどうかしら。それに私は今日うれしいのは、一日お客をことわって、『昼夜随筆』