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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

私は今二十枚ばかりの評論を終り、もう一つ夜終ります。

三月二十六日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県熊毛郡島田村より(厳島紅葉公園と広島駅の絵はがき二枚)〕

二十四日の午後三時のふじで東京をたち、ひろしま午前五時四十分、島田九時前でした。ひろしまから柳井線に入ったら、海と対岸の景色が珍しくて、目が大きくなったようでした。お家へ入って行ったら、中の間にお父さんが起きかえっていらっしゃるので、びっくりしたり、大安心したりでした。思ったよりずっとよくなっていらっしゃいます。ひる間、どっちかというとよくお眠りになるので、夜は御退屈のようです。気分も平静でいらっしゃるし、食事もあがれます。お母さんは相変らず御活動です。井戸がすっかりポンプになり、お店もさっぱりきれいです。

晴、島田の茶の間。

きょうは晴天、おだやかな日です。お父様は障子のそばへ床をうつし、今は座椅子によって上半身起き上っていらっしゃいます。上御機嫌。お母さんは、稲ちゃんがくれたウズラの玉子をわっていらっしゃる。隆ちゃんは丁度仕事からかえったところ。前の麦畑の麦は一尺ばかりのびて居ます。

家じゅうがいろいろと手入れをされていて、大変明るい感じです。