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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

あわただしい人の出入り。母上と私とは二時すぎまでお通夜をしてかえりました。私は私たちにとって一方ならない御縁の方であるからずっとお通夜したいと思ったけれども、お母さんが私の盲腸がわるいのでお許し出ませんでした。十一日に隆に託してお見舞を十円。御香典には貴方のお名前で二十円。

私が来ていたうちに全く急にこういうことになったことを、皆と単なる偶然ではないように話し合っていました。百合子はん会うたのは顕ちゃんに会ったもホンついじゃから、因縁じゃのう、しきりに伯母さんも云っていられます。伯父上としては御苦痛なく、あの家でおしまいになり、あの家から葬儀の出たことはマアよろしかった、お母さんのそういうお言葉には私も同感です。

御年五十四歳、母上より一つお若いのです。

十二日のお葬式には最後のお寺詣りまでずっとお伴しました。今十三日はお骨上げです。うちからは達ちゃんが行って居ります。野原の家、屋敷は只今は兼重萬次郎という人の手に入っていることになっています。しかしこの人はお母さんのよく御承知の人物で、自身の権利として二千円ばかりのものを回収すれば、あとは若し余分が出れば遺族に上げると申して居り、それは信用し得るそうです。