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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

あっちから廻送されるお手紙が大変に待ちどおしく思われます。

四月二十七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(クロード・モネの絵はがき)〕

二日ばかり前の細かい雨の降った日、新緑の濡れている色が美しくてうちに居られなくなりずっと歩いて土管の沢山ころがっているところの方を散歩しました。カラタチの花が高いところに白く咲いていた。小さい家が樹のかげにあった。入れた袷は鶴さんとお揃いです。ネマキは母上から。襦袢は島田で私がそうやっているのもよく似合うと云われつつ縫ったもの。

四月二十九日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(封書)〕

〔欄外に〕今日は休日で隣家に子供と遊ぶ父親の声がする。

島田のをぬかして第何信になるかしら。教えて下さいまし。

『文芸』に山本有三論のようなものを書くために、この間うちから殆ど全作品をよんでいて、昨夜それが終り、今日から書こうかと思っていたがどうもつまらない。有三の正義感というものの根源を明らかにすることが私の眼目なのだが、その根源がまことに云わば日常的で。――

四月十七日にあなたが島田宛に下すったお手紙うれしく、あなたがよろこんで下さることがうれしく、くりかえしくりかえし拝見しました。