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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

あのとき貴方は、ユリが作家としての生活、その名の中では幾分安易な気分もあるだろう二つに足をかけている生活云々と仰云った、その言葉を、云われていない言葉の内容にまで入らず、そこに出ている角度でだけ、しかも全身的にうけて、私はあの当時の不快な条件もあったから、まるで一匹の山あらしのように苦しくなってしまったのでした。ああ、貴方が私にこういうことを云い得るのだろうか。今日良心をもって生きていようとする作家の努力を作家だから安易であるという風に概括出来るのだろうか。偸安的でない作家が、そして私のような愛情で生きている女が二つのもの(態度)に足をかけて、ふりわけで生活してゆかれるなどと思うということはあり得るのだろうか。等々

今になると、私にも自分の心持の観かたの主観的だったところは分って居ります。貴方が仰云ろうとしたことも分るわ。貴方にそれを云わした感情の本質も。私たちは、或ことを話し合うに一番適した場合=心持に=を選ぶことが出来ない、又表現を細かく行届かせて話すひまのないということのために、何という思いをしたことでしょうね。けれどもあのことは私にいろいろ教訓を与えました。