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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

文学の仕事の上で、実質的な評価と他のものとの関係は丁度シーソーです。そういう時代である。私はそういうものに対して乱さず生活を押してゆくのだが、貴方に向うと私はどうもナムアミダブツ宗のようね。時々お数珠におデコを撫でて貰っていい気持になりたがるところがあった、アナ恐ろし。私の理屈がおくれていると仰云ることはよく分る、だが、私のような女でさえ、一番苦しいこと、一番我慢ならないと思う(主観的に)ことでムクレると、ああいう墨を吐くところ、(リクツのようなのは外の形だけよ)私は自分の日本婦人的事情を感じます。正体云々とお笑いになったが、私のみの正体でない。大変そのことを感じます。お手紙を楽しみにして待ちます。では又

五月二十四日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(ゴッホの絵の絵はがき)〕

五月二十四日、雨が降りますね、きょう、やっと合シャツやセルをお送りいたしました。おそくなって御免なさい。『改造』の小説42マイは「猫車」という題。もう一ヵ月ばかり前のやはり雨の日、ぬれた青葉の美しさにひかれて歩きに出て雑司ヶ谷の土管などつんである辺を歩き木の下の小さい家を眺めたりしたことを書いたエハガキ御覧になりましたか。