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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この二枝は、日曜日に寿江子が哀れな犢になったあと、電車にのって武蔵嵐山というところまで当てずっぽに出かけ、そこに畠山重忠の館趾の梅林というのを見たときの土産。この花は薄紅梅ですが、私は昔、女が紅梅重ねと云って着た色の濃い濃い紅梅が実に好きです。こうやってしげしげと見ると、梅の花は、花の裏の萼のところも美しく蕊の見える表より裏が面白い位ですね。その梅林の路に農士学校というのがありました。黒紋付に下駄をはいた書生が、牛肉の包みか何かぶら下げて田舎道を歩いていました。

犢は、けさ熱川へ出発いたしました。おひささんをつけてやりました。ひさは今夜かえります。久しくあけていた家へ行って、布団ほしたり炭買ったり米買ったりするのにポツンと一人では何だか可哀そうだったから。正直に一人ゆくと思うとね。だものでつけてやった次第です。この頃は犢の生活も私に対してフランクになって、フランクになれるように整理されて来て何よりです。体の方も糖も大分ましで、私が病院にいた間あの位動けたからこの次かえる時分には又よくなって居りましょう。寿江子は熱川からかえるとノミにくわれたあとだらけになって、日にやけて、来ます。