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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

二十三日には鉢でいいかしら。それともまだ満員でしょうか。

貸家のなさ。きょうの朝日の裏の広告など、売地、売家が一杯で貸家三四軒です。

○今そろそろ五時になろうとするところ。豆腐屋のラッパの音がします。ヘッセの「青春は美し」という小説をよんでいます。訳者からおくられて。この作者の作品もロマンティストとして或美しさはもっているが、どうも。ペシコフなども若い時代随分当途のない旅をしたけれども、そして十分ロマンティックであったが、ヘッセのようにそのような旅そのものが目的でなかったから随分ちがいます。

きょうは暖いことね。珍しく足袋をぬいでいます。今年はじめて。暮に茶の間の畳新しくしたことお話したでしょうか。いい正月をしようと思って、心祝に茶の間の畳を新しくして二日目か三日目に盲腸を出してしまった。新しい畳は素足に快くふれます。

私たちの白藤の樹ね。あれをちゃんと手入れして美しい花を咲かせたいと思います。今では野生にかえっていて、ほんの一房まるでちょこんとした花をもっただけでした。林町で、庭の隅っこにいる。樹としては大きくなりました。この庭には入らないでしょう。