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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
素人の二階は困ります。実に気がつまる。アパートを見つけたいと思って居ります。勿論今こうやっているようには行かなくて、様々の不便や何かあるでしょう。アパートにいる友人(ミケランジェロをくれた女のひと)が云っていたが両隣に夫婦者のひとたちがいたら迚も暮せぬそうです。ケンカすればするでやかましい。睦しければ睦しいでやかましい。そんな壁だって。物を書くような人が、いい加減のアパートでは結局落付けず皆家をもってしまう。それもわかります。私たちの条件では最も家庭的な生活をしようと思うと、見たところ及び日常も、家庭的という旧来の形はこわれなければならないというのは面白いこと。私たちというものの内に向った心持がなければ、仕事に向ってもそういう気持がなければ、アパートなんて、迚も駄目でしょう。私は独りっきりで一日じゅう口をきかないような暮しは苦しいの。ですから、人間の間にはさまったようなところで暮す方が、一人ならいいと思います。素人の二階なんかだと、下のおかみさんとの交渉が、私が女だけに厄介です、口を利くと何か対手の興味は身の上話的になるし。アパートには又それとしての不便がある。