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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それに小説でない方が、ものをかく人間には却ってよいし、語学の点から云っても。
この間、何かの雑誌の五行言のようなところに、矢内原氏が「現代は波瀾きわまりない時代であるからこそ、自分は一層永遠なるものに心を向けようと思う」という意味の言葉を云ったのを志壮なるものとしてあげていました。そのとき、永遠なるものとは何であろうという気が閃きました。感心している人は文句に魅せられたのでしょうが。歴史性は、絶えず変ってゆくそこに歴史性があるというような本質でつかまれた上で見ると、云った人の基督教精神や感心したものの心に求めているものの質が明らかに描き出され、面白い。動きの裡でその関係、その矛盾を生ける姿でとらえている点では貨幣についての著者が、作家に教えるものは実に甚大です。お手紙に早寝と書いて消してあります、笑えてしまった。
三月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
三月三十日 第二十七信
きょうは何と上気せる日でしょう。六十八度です。気温よりあつく感じます。机の上の、小さいけれども本もののマジョリカの壺にアネモネをさしておいたら、けさの蕾が見る見る開いて、満開に近くなってしまいました。