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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

いや応なく泣きこまれた由、あの辺貸家というものがないので。これは徳山の何かの店が出張店を出すためその弟家族をよびよせた由。小肥りのまことに博識(!)の奥さんが、膝おしすすめて喋ろうとされるのにはさすがのおユリも降参しました。台所は共同にしていらっしゃる。野原の家の有様は大体そんな工合。大して落付かないというのでもないが、土地の空気は落付かず。あすこに建つものは特殊な性質のもので自給自足のものです。下うけ工場というようなもので外部が拡大することもないし、官舎の数だってきまっているし室積が消費面に当るし、野原は一定のところまでで地価にしろ、すべて飽和する。これは比較的早く飽和するにきまっているし住宅地とすれば、これ迄より条件はよくないわけです。危険の増大から。だから見果てぬ夢は見ないことと富ちゃんにも話したことです。地価なんかについてね。\25 になって売れたらあとの 150 坪かは \50 にもなったらと思うらしいから。それは笑い話ですものね。都会風になるのかというように思えたが、あの壁を見たらすっかりわかりました。そういう風になるのではありませんね。