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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
(三人は縁起をかつぐから)
薬や何かやはり少しは持ってゆけるということが十六日に会ってわかったので、早速クレオソート丸その他消毒石鹸まであるので、「班でこんだけ用意せちょるものはない云いよります」という状態になりました。すこし咳をしていますが元気だし、平静でちっともいつもとちがったことないし安心です。お母さん二十一日に宇品へいらっしゃりたいらしいが、あぶないし、隆ちゃんもきっといらっしゃらないという約束をおさせ申しました。広島は新緑でね。西練兵場のあたりの緑は実に美しい色です。六時に夕飯のラッパがなり、まだいてもよかったらしいけれども、隆ちゃん入浴しなければならないし、御飯もたべなければいけないからというわけで六時半ごろ営門を出ました。第一中隊の建物というのはずっと奥で、営門の方へ私たち歩きながら、広場を突切ってゆく隆ちゃんを見送っていて、あっちの角を曲ってしまうまでにこちら振向くかと思っていたら、私たちのいる門の方とは反対の馬場の方二度ばかりふりかえって、こっちは向かず行きました。そのふりかえりかた、ふりかえるときの肩の動かしかたなどあなたと実によく似ています。