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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

寝汗おかきになってうすら冷たいの? どうぞどうぞお大切に。ピム、パムはあなたの左右からお対手に侍りたいようです。御気分のいいとき、ゆっくりと森や丘や泉の散策もいいかもしれません。本当にお大事に。あなたが、着実に体をお養いになるよう私も着実な勉強をつづけますから。では又明朝。

五月十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

五月十日  第三十七信

お早う。いかがなお目醒めですか。よく眠れましたか、私はぐっすり。体はまだ幾分きしむところがありますが。寝汗は出ませんでしたか。寝汗をかくと非常にだるいのだそうですね、背中がぬけるようなのだってね。寿江子の話です。きょうもいい天気らしい。

きのう二時間余つづいた青葉かげの白雲は板橋志村のセルロイド工場でした。志村はいつか手紙に書いた太古のタテ穴住居(穴居的)の遺跡の多いところです。見学したタテ穴の一つに火事の起ったらしいところがあって、そういう穴居人たちが火事でどんなにさわいだかいかにも興味深く感じて見たことも書きました。同じ地べたが、今日では同じ火事ながら大ちがいのわけですね。志村には東京で初めての女校長のいる小学校があります。