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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

寿江子も今気候の故ですこし工合わるがって居ります。近日中に又熱川にかえるつもりで居ます。栄さんのところでミシンかりてこれから着るものを縫って、そしてかえる由です。寿江子もお母さんとは気の合うところあり。お母さんは、おかえりになって一日二日と日が経つ毎になつかしさがまします。本当にいいところがおありになる。縁側のところで達ちゃんの嫁さんの話が出たらそれにつれて、お母さんは私の膝にお手をおいてね、「あなたは家事向のことを一切心配せんと、仕事をずっとやりとげなさいませ、それで結構」とおっしゃった。御自分もそれをよろこぶ心持でね。お母さんも勉強には興味もっていらっしゃる。御自分の血統の中にあるものとして尊重していらっしゃる、これはありがたいことね。東の窓から朝日がさし込んで背中の方が明るい部屋です。ベッドの白いシーツが朝日を爽やかにうけています。きょう一日御機嫌よく。

〔欄外に〕◎そちらに出かけると、マア二時間費します。その時間だけ書きます。お母さんも本当に「熱い女」のお一人ですね。なかなかようございます。

五月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕