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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

十七日

きのうは、午後から評論家協会の催しで、駐日弁事処長とかいう仕事をしている人で趙滉という人の芸術に現れた日支民族性という話をききに出かけました。所謂士大夫の教養としての文化、古典的文化、支那趣味として日本の諸賢に接触されている範囲の支那文化の特長と日本の文化の特長を対比的に話し、「芸術というものは決して大衆に判るもんじゃありませんよ」(日本語でこの通りに)と云われる考えでの話ですが、特質の或対比は、はっきりつかんでいてなかなか面白かった。支那の芸術は、すべて要素の複雑さ豊富さの融合渾然を愛し、総合的関係の間に生じる調和を愛すが、日本の人は簡素を愛し、一目瞭然を愛し、何にでも中心を見つけたがる。支那人にそれはない。茶も華も支那から来たものだが、それが日本に来ると茶道となり華道となる。道がすき。そして形式化し、例えば茶道で茶わんを評価するのに五つの要点があってどうでもそれにかなわなければならない。本家の支那にそれがない。こまかい、いろいろのこと、面白かった。底の深さが。只古典的見地の基準で対比されているだけの話ですが。非常に内包するものの大さを感銘しました。