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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

ところが二十八日に、ガーゼにひどい浸潤があったので、きっと化膿したと思って糸を切って、さぐり調べたら化膿ではなく、肉も上って来ていて浸潤は漿液と判明。大いに皆御機嫌がよくなって、寿江子はその安心ニュースをもって出かけた次第でした。

二十九日にはすっかり下熱して、初めて六度。三十日には初めて椅子にかけて食事をし、そちらへの手紙も書いたという風でした。

こちらでは、私がのびてしまうと万事ばねがのびて利かなくなって不便です。そちらへも寿江子としたら珍しくよく足を運んでいてくれますが、こちらがへばってボーとなっていると、それに準じて運転が鈍ったり止ったりする。これはどんな場合にも一番困ることですが、寿江子にしろせいぜいのところでしょう。栄さんが丁度工合をわるくしていたことも不便の一つでした。今度の経験から、一つきまりをこしらえておきましょう。万一私が病気その他で動けなくなったら、きっとその容態や情態を知らせ、又そちらからの用をきく役目を一人それにかかって貰うようにきめましょう。規則的な目的なしに暮している人々を、急にキチンと動かすことはこっちの気力がつかれて、この間のようにへばっているとつい及ばなくなってしまう。