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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それから三越にまわって傘のはりかえ。お母さんのいらしたとき、自動車が急停車して、私の手首にかけていた傘の金ものの柄が殆ど直角ぐらい曲ってしまったこと、きっとかきませんでしたろうね。そのために直さねばならず、布地もいたんで洩りますから。二本の傘を直すのです。一本は私が動坂の入口をさして出入りしていたの。覚えていらっしゃらないでしょうね、骨がしっかりしていて、布地はもう破れ障子であったの、それを直して。
それからうちへかえり(池袋までのろのろ市電で、新橋―池袋です)すこし休んで髪を洗い、涼風に吹かれたというわけでした。
きょうは、家じゅうごく早ねいたします。ひさは今夜一晩このうちで眠るだけですから、どっさりたっぷりねなければならず、私は又明日からいそがしいし、ひさはいず、今夜せめてのうのうとねておこうというわけで。昨夜も明けがたまで眠れなかった。間におかれる日がちぢむにつれてよく眠れるようになるのがわかりますから、きっと、いまにあたり前になるでしょう。おかしいこと。土曜日までは三日だけですから。
あしたの朝ひさは栄という、いつか(去年の初夏、私が島田へ急に行った留守から)いたひさの友達の娘のところへゆきます。