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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

予定どおり古代餅は中椀にもって出して皆によろこばれたとのことでようございました。あなたにも安心するようにつたえてとのことでした。でも、お客が皆かえってしまったときはしーんとして、その静かさがお心にしみた工合です。別に何ともおっしゃってはありませんけれども。文章のどことなしにそれが感じられました。来年は来るのを待っている、とおかきになっています。

きょうはまだどことなく落付かない心持です。しかし、今度は冬になって、農繁期が終って、誰かみつかる迄は、こういう状態でやって行かなければならないでしょうから、早くなれてうまくやって行きたいと思って居ります。寿江子は十三日の母の命日が終るまでは東京に居りますが、あのこも緊縮で、夏着るものを林町のミシンで縫っているので、こっちにばかりもいられません。でも、私は昨夜林町へ行って、しんから底からわが家を恋しく思い、わたしたちの生活というものについて、胸の痛いほどの愛着を覚えましたから、淋しささえやっぱり可愛いと思います。そちらでも夕方豆腐屋のラッパの音がするでしょう? そういうとき、あのいつかの絵ですっかりおなじみの間取りの家の中で、コトコトやっているユリを想像して下さい。