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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
か、可笑しい。この間自分のにせものが大阪にあらわれて宿やでかっぱらいして逃げたのですって。それをプリプリ怒って書いている、宿屋をする位なのににせものの見さかいがつかないか云々。自分の顔は天下に知らぬものないのに云々。かっぱらいする女が自分のにせで通る、そこに何とも云えぬ皮肉を感じないのね。自身についての皮肉、世間のめくら千人への皮肉や悲哀、そういうものまるでなく、元知事某がおこるときみたいにおこっていました。こういう感情の、全くのおかみさん性、なかなか彼女の通俗作家としての成功とぴったり一致しているものですね。一番低くてひろい底辺の一部をなしている意味で。それが、逆立ちして、形の上であらわれているのだから、文化の歴史も一通りのものではないと思われます。
きょう「ミケルアンジェロ」の話がてっちゃんと出て、あの著者はこれより前の著述でも、あの文章にあらわれている感動性が溢れていて、対象によっては形容詞が多すぎて、妙だそうですね。そうお思いになりますか? 芸術家を扱い、対象とぴったりしているために邪魔ではないが、やはり或過剰があります、たしかに。それはすぐ感じますが、それにしろ、そういう過剰など持とうにも持てない人ばかり多いときには、やはり過剰であることにあらわれている著者の未熟さを云うより、そのもとにあるもの