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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

第二冊まで。千九百十四年に到るフランスの社会を描こうとしたものだそうです。この何々家の人々というのは外国文学には決して例がないわけではないけれども、例えばロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」など、実に立派であるけれども、クリストフによって一人の天才の生きる道を語っていて、時代そのものを描く(人を通して)というところに焦点はおかれませんでした。ヨーロッパ文学の歴史で大戦というものは大きいエポークをなしているが、大戦後の文学の受けている影響が二様であることは極めて興味があり又教えるところ深いと思います。一つの現象は、ジェイムス・ジョイスの流派です。大戦によってこなごなにされた伝統、過去の思索の体系。その破片の鋭い切り口に刹那を反映し、潜在意識にすがりついて行った文学。こういうどちらかと云えば現象的な文学の姿に対して、そのような文学を生む社会の心理そのものを凝視しつつ、社会心理に注意を向けて行って、箇的な主人公のこれまでの扱いかたから社会の層のタイプとしての人物を見て、その矛盾、相剋、進展をリアリスティックに描いて行こうとする努力が現れている文学――このデュ・ガールのような。