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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
「その年」の母は、元気をとり戻しかたが、現実の受け身な肯定でないし、あきらめでないし、ある生活的なプロテストとしてあるのです。現代の明るさというものがもしあれば、それは決して呑気なテカテカ日向の明るさではなくて、非常に光波の密度の高い、その透明さの底に、或る愁をたたえた美しさのものです。非常に質の緻密な知性とそのひろやかさと歴史の洞察への長くひるまない視線から射出されるものです。ユリの明るさの感覚も、おのずからそこまで成長いたしました。子供の日和ぼっこのようなのや、何か殆ど肉体的な感覚的なものであったところから。面白いものね。ああ、でも決して所謂哲学的ではありませんから。どうか御安心下さい。感性的なものとして矢張りあるのですが、その質が大人になってゆくというわけなのです。
うちにいてくれる人のこと。仰云っていることよくわかります。いつぞやもふれられて居た点でした。仕事している間、家の中大変な有様だとしても誰も小言は云わないのですし、自分の食事ぐらい、この頃の体の調子から苦労ではないし、果して、一人では迚もやれないかどうか、考え中です。一人になった当座は実にいやでしたが。