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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そして、そろそろ「明治の婦人作家」の下ごしらえ。本月は火・木・土が二十九日までつづきますから、早めにとっかからなければ。明治四十年代の思想や文学は複雑で面白うございます。この面白さが、さながらに脈絡をもって活かされるのには、大分勉強がいりますから。図書館の目録さがしも大分勝手を覚えました。日本が十年十年に一つの波を経て今日に到っている。おそくはじまった急テンポということが何とまざまざとしているでしょう。女の生活は、両脚を手拭でしばってピョンピョンとびする遊戯のようにその間をとんで来ているわけですが、この頃では手拭をほどいてかけ出そうとはせず、手拭はつけたまま、そっちへひとの目も自分の目もやらないように顔や両手でいろんなジェスチュアをする。そういう芸当を覚えて来ている(文学に於て、生活態度において)。明治四十年代はまだ非科学的ではあるが、手拭を見て、抽象の呪文で(「女性は太陽であった」というような)ほどけるものと思っていた時代。昨日の火曜日は何か錯雑した印象でした。「それがですね」というような癖なのね、平面の渦巻の感じ。では又明日。どうかよくおやすみ下さい。