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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

それは単に生理上の目標として云われているだけのことだから。

いずれにせよ、八月中旬ごろには目白へかえれるでしょう。今もうこちらに本その他もって来ているから、そして今夜ともしれないから戻るに戻られず。本当に可笑しい。しかし、この次のお産のときは、私はもう留守番はしないことにしようと条約を結びました。だって、何だかやり切れないところがありますもの。

髪をさっぱり苅っていらしたし、髭もそれていたし、白い着物きていらしたし、すがすがしく見えました。そして、極めてリアリスティックに、いろいろの性格は現れるのだからと云っていらしたこと、深く心にのこされました。実にその通りです。歴史が含んでいるだけの多面さが、結局はそういうところへ出る。よきにつけ、あしきにつけ。私もそう子供らしく考えては居りませんから安心して下さいまし、一喜一憂といううけかたはして居りませんから。

一つの仕事――文学でもそうですが――にたずさわって来る人様々の角度というものをいろいろ深く考えるし、真に仕事に献身的であるということは、どういうことかということも、新たな感動をもって理解を深められます。