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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

明治四十五年頃を青年時代で送った人はどんな心持で回想するでしょう。左団次と小山内薫の自由劇場の公演のとき、三田文学会は揃いの手拭で総見し、美術学校の生徒は赤い帽子の揃いで見物して、左団次も舞台でそれをかぶった由。今の小宮とかいう人々はきっとそういう時代の空気のなごりをもっていて、芝居に愛好をもっているのでしょうね。

福沢桃介が目黒の方に、洒落た丸木小舎の外見の小劇場をもっていて、そこでストリンドベリイの「令嬢ユリー」をやったのを見たのが思い出されます、大正三年頃。私は大きいリボンつけて、緋ぢりめんの裾のついた着物着て。新生活をもとめる女のひとの間に俳優になろうとする気運が旺であったということも時代の空気だったのでしょうね。上山浦路(草人の妻)は女子学習院出身で、学校は除名した由。そんな時代。

福田英という民権時代のお婆さんが、「新しい女」の問題にふれて書いているなかで、男女同権の内容は大ざっぱながら、その同権の可能にしろ、どういう客観的条件がなければならないかという歴史の進化を、はっきりとした表現と方向とで書いているのは面白うございました。らいてうの「太陽なり」