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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

それから分りかたよく、というのはハイと云えるけれど、鼻でくくったようなというのは苦笑ね。上に木でとつくの? まさか、ねえ。

きょうはくたびれて、かえって、お湯をあびつつ、ふと、あなたが肩の上の勲章に何気ない風で手拭をかけたりなすったときの手つきを、何とも云えない鮮やかさで思い出しました。いろいろなところの勲章は面白いこと。

本月は又なかなかいそがしいから、大いにがんばって、せめて乙下のレコードくずさず働くつもりです。どうかうまくゆくようにと思って居ります。忙しいのも九月上旬、出勤も同じぐらいの日どりですから。

おや、国男、太郎、ああちゃんと赤コチャンのところからかえって来ました、夕飯私一人でした。だからこれもかけたようなものです。昨夜太郎泣いてね。私たち何を云っても泣きわめいていたら十時すぎお父さんかえって、鯨がアンモをたべたという話をしたら、三分ぐらい眠ってしまいました。実にこのききめと云ったら! この太郎め、と、自分にも同じききめのあるもの思いながら笑ってしまいました。夜冷えにならないようにね。風邪おひきにならないようにね。では又。

八月十八日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕