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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
きっと、あなたもこの雨の音を聴いて、やっぱり傘をさして出てゆくような心持になっていらっしゃるのだろう。そう思いました。
雨の音は暫く胸の中へ降るように響いていたが、御飯をすました時分にはもうやんでいた。雨もうやんだのとひさに訊いたら、大きなみぞれでしたと云った。霙が、では降ったのね。今はいい星夜です。九時ごろバラさんが外からかえって来たとき、ふるような星ですよ、と云っていた。
ゆうべは夕飯後茶の間にいて、縫いものをしていました。私たちの八年目の記念、私が死なないで虫退治出来た記念、そんな心持でそちらでよく着られてもう着物にはならない大島と、どてらであった八反とを切り合わせてベッドの覆いをこしらえてかけているのです。長いこと、ベッドスプレッドを欲しいと思っていて、出来合の安ホテルのようなのはいやだし、ついそのままになっていた、そこへ不図思いついて縫いはじめたわけです。出来上るのと、あのスケッチの海老色と青の格子のかけぶとん(動坂であなたのだった)の上へ、今そこで着ていらっしゃる古い方の大島の羽織と同じ布と去年の冬まで着ていらした赤っぽいような細い縞の八反の布とがまざったスプレッドが、昼間はかかることになるわけです。