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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

電燈の下で、例の私の場所に坐って長いこと黙って縫っていた。。そろそろ私はひき上げようとする時分、寿江子が、何かたべたくなって云い出した。「何をたべたいのさ」と私がそう云う。「お姉様何がいいの」。私のたべたいものはきまっているわけでしょう、私はあのブッテルブロードがたべたい。どんな味がしたか、本当はよくわからず、たべたことだけは忘られない、あのブッテルブロードがたべたい。「ね、何がいいのよ、お姉様は」縫いながら「私が一番たべたいものは今、買って来てくれる人がないから、駄目さ」「ふーん」そんなことを云っているところへバラさんがかえって来て、結局紅茶一杯のんで、私は二階へあがりました。

すぐ寝床へ入ってしまった。

けさは、熟睡したいい心持でおきました。

これはゆうべ日記の欄外を見ていて発見したのですが、八年毎に週日(ウィーク・デェイ)は同じになるが、旧暦は同じではないのね。二十三日は今年は旧暦の十二月四日。三日月、四日月のわけです。床に入る前、雨戸をあけて物干のところへ出て見たら、そんなにひどく寒くもなくて、大きい奇麗な星が一杯きらめいていました。

すこし体が弱いところがあって、しかも病気のあと新しい命が流れているところがあって、今の私は、大層面白い工合です。