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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
飽きたら又飽きたときのことです。
稲ちゃんからハガキが来て、小説、うまく進まず、自分から書く意義を見失ってはなだめたり、すかしたりしてかいていると云って来ました。長いもの、短い時間でまとめようという気が先に立つと、やはりせっついてそんな工合になるのでしょう。それでもいずれ何とかまとめましょう。その点では大した技術家だから。
『図書』は九月でお金が切れていた由、御免なさい。そちらに通知が行ったわけでしたが。『英研』は来年四月迄ですからどうしたのかしら。しらべ中です。ユリは可笑しいでしょう? 余り詩集が目先にちらついてちらついて、かんしゃくおこして詩集を懐へねじこんでしまったという工合です。ねじこむというのが、やはり懐の中だから、又笑ってしまう、ねえ。
十月二十八日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十月二十七日 第百信
雨戸をしめた二階で机に向っていると、飛行機の音、交通整理の呼子の音がしきりにして居ます。きっと同じ音がそちらにもしているのでしょうね。門の前に立って月空を眺めながら解除まで待っていて、あがって来たところです。
きょうは家の角でも焼夷弾練習があったりして、一日のうち何遍となく外へ出ます。