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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
生活をよく知っているから。
坂井さんは北京です。北京には「囚われた大地」をかいて林房がトルストイのようだとか云って私がカンカンになったりした平田小六だのその他そういう人たちが何人もいて、百鬼夜行的光景を演じているらしい様子です。『百万人の哄笑』の作者はゴーゴリのつもりで見ているらしいが、ユーゴーもあやしくて、本当のところは心配でなくもないというわけです。何しろ北京は古都の飽和的空気がこわいと石介さんが南京へうつったのだそうですから。
スケッチ、あんなのでもスケッチね、シクラメンの鉢があったり青木が冬の赤い実をつけたり、いきなりとなりの羽目が出ているのや、おわかりになったでしょう。いまに物干のところ描いて貰いましょう。そして玄関のところかいたら、うちは相当立体的になるわけですが、私のスケッチの方は代筆たのむ、のくちだからどうもはかどりません。
あか子はね、今おめにかかれません。キリョウのいいところおじちゃんにおめにかかるべき筈なのですが、只今は髪の間にしっしんが出来て瞼まではれぼったくしているので。きっとお湯のとき頭を洗う、その濯ぎがうまくゆかなかったのでしょうと思います。