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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

これは或意味では傑作中の傑作よ、自然な点で。同じとき二日ばかりおいてとった婦公のは、実にちがいます。うつす人の神経のかたさが反映してしまっていて。自分の気分もちがうのだろうし。面白いこと。そういういろいろの条件でいい写真なんてすくないものです。

そう云えばチェホフの家がヤルタ(クリミヤ)で博物館になっていてそこへ行って見たら仕事机の上にいろんな写真がたててありました。象牙細工の象の行列などとともに。外国の作家は自分の仕事机に写真があっても平気なのでしょうか、私は写真は迚もおけません、あなたは? ボリュームがありすぎて。私の机の右手(ああ先月あたりから机南向にてすりに向って置いているのです)の壁に原稿紙に書かれた心持のいい字がかかっていて、それは眺めてそこに休まり励まされる感じですが。糸くずを丸めたような消しかたも親愛です。これから送られる写真目にさわると云ってどこかにつくねられてしまわないように。きょうは早く早く八時ごろ(!)眠ります、そして明日は早朝から。ではどうかお元気に、お疲れになったでしょう? そう思います。では、ね。

十一月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕