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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そちらの薬はどうでしょう、私の愛用薬は今品切れなの。これは本当に残念です。あんなにいい薬だのに。御同情下さい。薬をつくるひとも原料が手に入らないのでしょう、気の毒に。

今寿江子が来て、多賀ちゃんと初対面だもんで下で、すこしきまりのわるいような子供っぽいような声で喋っています。面白いわね、たかちゃんの方が年下なのに、姉さんのようよ。

これは今のところ笑話めいていますが、野田の爺さん、あの野田、あれが隆ちゃんを養子にほしいと云ってお母さんはのり気でいらっしゃるって。勿論まだ本人がいないのだから、あなたがお含みおき下さればいいのですが。あすこには気ちがい息子がいて、おやじを刃物で追いまわすのよ、私は隆ちゃんがそんな奴に刃物三昧に会うのは大嫌いよ、誰だってね。では又近日中に。月曜日そちらのかえりに図書館。

お大切に、ああなんて終りが来ないのでしょう、サヨーナラ。

十二月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

十二月二十四日  第百十六信

二十三日のお手紙、きょうは東京市内らしく二十四日のけさつきました。すこし私は豊年らしい気持になります。こうしてつづけてお手紙頂けると。