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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

きのう島田からも送って頂きましたし。どうか早いめにお知らせ下さい。きょうのお手紙に交通杜絶とあり全くそれに近いわね、御免なさい。私がやきもきするの、小さな気だとお思いになっていたかもしれないけれど、実際の事情とお分り下さるでしょう?

六月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

風邪気で床にいるうち、岩本のおば様が孫さんをつれておいでになりました。お年よりはお思い立ちになると、待ったがないのね。もう足かけ三年お会いしないのに、七十歳で全くお元気でしゃっきりして、ちっともふけていらっしゃらないのにびっくりしました。孫さんというのは、昔小さいときオルガンをひいてあなたにほめられたという娘さんよ、十九で、去年明石という応用化学出の人(鹿島高工)と結婚し、その人が応召で十條(王子)の工廠づとめなのですって。幹部候補から少尉になっている由。おばさんも孫さんも満足して暮している様子で何よりでした。十時半頃から来られ、咲枝が国府津へ行くと大騒ぎのなかを、どうやらおひるを仕度してそれでもよくあがりました。三時すこし前おかえり。いろいろ親類の話が出てめずらしい噂伺いました。