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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
そして、これからは謄写屋から来たらすぐお送りしてしまわなくては駄目ですね。これからは、代金支払ったら受取りをみんな森長さんのところへ届けておきましょう。そしたら、あの人は事務的だから、後から調べるとき有用につかうでしょう。こちらが病気だって留守だって、盆や暮には礼儀をつくしているのに、こんなとき不誠意だと、商売道から云ったって下の部と思うわね。あわれ、あわれ、受取書よ、どこからか出て来い。めをつぶり手をたたき、三遍まわるそのうちに、受取書よ、出て来い。(と行くと幸なのだけれど)
今頃岩本のおばさまは孫さんと並んで歌舞伎見物でしょう。暑くないから幸でした。多分水曜日ごろ、田舎へのおみやげをもって北沢へ行きます。おくさん、上の娘、下の娘、男の子、父さんだって一寸何かあればうれしいでしょう。この頃はおみやげ本当に苦心よ。女の身のまわりのものは点数ですし。下駄でもあげようと考えて居ります。男の子へはオモチャ。おばあさん御自身にだって東京みやげがほしいでしょう。何しろあのお年で、元気とは云ってももう二度三度出ていらっしゃれるかどうか分らないのですから。歌舞伎の切符はこの頃四円に四円四十銭から税がつきます、一枚九円四十銭よ。