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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

足袋はまだそちらに有るでしょうか。

私は風邪をひきません。そちらもくれぐれお大事に。

一月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 ミレー筆「編物をする女」の絵はがき)〕

二十五日のお手紙有難う。

二十六日に寿江子さんと御返事を書き始めたのに今日もまだ未完成という始末。それほど長いのではなく、代筆係りがつかまらないというわけよ。一、教材社へは手紙出しました。二、たちばなのチェホフはありました。三、高山書院の本は二冊ともあって各一円五十銭、四、平凡社のもあって一円八十銭、五、毎日年鑑は附録はどうだったか覚えていません、朝日には附録がついているから同様ではないでしょうか、六、衛生学はまだ調べがつきません、七、足袋は製作にとりかかります、八、カロッサは三笠と河出から出してるらしいけど本がなくてうちにはバラバラに四冊あるだけです。「幼年時代」は何しろゴーリキイやトルストイがあるからお手柔らかに思われますが。

一月二十九日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 パリ・ノートルダムの写真絵はがき)〕

これがせむし男のノートルダムです。右のはずれにみえる広告塔のようなものはパリーの共同便所でブドー酒くさいおしっこが流れ出ていることがよくありました。