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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
きょうはすっかり夏になりました。こんなところ覚えていらっしゃいましょうか。いつか目白のお医者さんからかりた『時計の歴史』と『ラバジエ伝』どうなりましたろうか。よそへは行っていないでしょうと思いますが。『週刊毎日』買えず『日評』も買えず、御免下さい。病院通いで書生さん寧日なく、宅下げの夜具まだとれず夏ぶとんもおくれていて御免なさい。月曜に国かえって来ます。
七月十七日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(山の風景画の絵はがき)〕
七月十六日、本当の暑さになりました。あつい防空演習でした。今夜ゆっくり手紙をかこうと楽しみにしているところ。私の風体はね、紺のもんぺズボンにあなたのテニスシャツを着て居ります。大したものでしょう?『外交史』の下巻もうおよみになりましたろうか。アカデミーの『世界貿易論』というのを買い面白そうです。私は今ストレチーの『クイーン・ヴィクトリア』をよんで居ります。
七月十七日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(セザンヌ筆「パイプを咥えた男」の絵はがき)〕
七月十七日、この髭の垂れ工合が三十代のゴーリキイのルバシカを着た写真を思い出させます。