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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
病的に汗が出たりして。きのうは、咲枝は子供の心配がとれないのだから、「現金で御免ね」と云い乍らしんからほっとして上機嫌な晩をすごしました。
この何年かの間に、あなたは随分ひどい病気を次々となさり、どうにかそれに克って来ていらっしゃるのは、考えればまことに大したことです。先ず猩紅熱からして、ね。もうこれがしまいで、段々恢復の条件がととのったら順調によくなって行らっしゃることでしょう。みんなびっくりして、呉々お大事とのことです。栄さんや何か。
けさはね、すこしのんびりとした手紙をかくのよ、いづみ子の近況などについて。いづみ子も近頃はもう全く一人前の淑女で、ぽっちりと鮮やかな顔色や柔軟でしかもいかにも弾力のこもった全身の動きや、なかなかみごとな存在となりました。あれの特徴であった何となし稚気なところもそのままながら、どこか靭さをまして豊醇です。そしたらね、つい近頃短いたよりをよこして、ごく内輪な表現ですけれども、どうしても好ちゃんのほかに旦那さんはないと心を決めたらしい風です。今時の女の子に似合わず、大変含みのある表現でそれを云って居りますが、そのために却って心の一途さがくみとれます。