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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
これらのクラシックのものは、どれも本物ではありますが、其々の大作家の全スケールからみれば全クフラグメントです。コローにしろ、ブリューゲル、ヴァン・ダイクみんなみんな壁を圧する大作をもっている巨匠で、その大さその精励、努力を土台として、小品もつくっているのです。しかし、こうやって将来されている作品しか見ることの出来ない人達は大家の世界的な規模、容積、気魄に打たれ、という芸術上のありがたい刺戟を感じることは少くて、何か近づきやすく詮索がましく、高揚されるより真似の出来るところをさがすという傾です。日本の金持はなかなか大きな作品は買えないということにひそめられる大きい意味を感じ、体がひきしまるようでした。
ペンさんは十月二日におよめに行くから一緒に一度御飯たべようと思い、しかしこの頃は外食券がないと御飯たべられないのですって。そこでペンさんの家へゆき、おかずを私が買って母子と三人でたべ九時、夕立の後かえりました。月夜の中を、送ってもらって。
きょうはいくらか御疲労です。けれどもいい心持よ、何しろ、ほんとうに足かけ三年来はじめて用事でなくて外出したのですもの。